ヘッドホン:MDR-Z900HD:MDR-Z900:MDR-Z600:試聴 比較 レビュー チューニング など

以前MDR-Z900HDについて書きました。daih73.hatenablog.jpその後物欲が湧きまして、MDR-CD900民生用の後続機種のMDR-Z900を入手しました。既にMDR-CD900の系譜を一通り手元にあるのですが、MDR-Z900の系譜も一通り揃えてしまいました。病気ですね。

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そして聴き比べをしつつMDR-Z900に手を加えて、気持ち良く聴いてます。

  • 早速、聴き比べ:3機種ともイヤーパッド(中華製)交換済みです。そのため、条件が一緒という意味では、裸特性を比較試聴しています。
    • MDR-Z900HD:以前聴き比べした時と同様に2k-8kに不自然な山があり、バランスが崩れてしまっています。後述しますが如何ともしがたい感じです。
    • MDR-Z900:前評判通り低音量感がたっぷりです。低域について様々なレビューを見かけますが、はっきり言って「量感たっぷりの緩い低音」といった感じです。ただし、高域(16k以上)がよく伸びていて、奇麗すぎない(つまり原音に忠実な)シンバルサウンドがよく出ています。アモルファスダイヤモンド蒸着振動板が利いているのかもしれません。こちらも後述しますがほんの少し手を加えることで劇的にバランスが良くなりました。
    • MDR-Z600:改めて聞いてみると、バランスが良くて、音楽を聴いていて楽しいです。ただし粗探しすると、以前聴いた時と同様に若干ナローレンジ(普通に聴いている分には全く気になりません)な感じがします。もしかして隠れた名器なのでは?というか正真正銘隠れた名器だと思います。やっぱりSONYは、ドライバ口径40mmが得意なのではと思います。
  • ここからが本題です。(まだ本題に入ってなかったの?草)というのは、他で書かれていないことを題材にするのが当ブログだからです。
  • いつも通りMDR-Z900もグランド分離改造しました。その過程で、可逆性を担保したチューニングをしました。これが驚くほど効果がありました。アモルファスダイヤモンド蒸着振動板の良く伸びた高域はそのままに、同機種の特徴というか欠点の「量感たっぷりの緩い低音」がきれいさっぱり無くなりました。霧が晴れるとはこういうことなのでしょうか?音楽を聴いていてとっても楽しいです。
  • 以下チューニング手順です。
    • チューニングは、6mmの正方形のポストイットを使用します。f:id:dai_h_73:20210529031955j:plain
    • ヘッドホンのイヤーパッドを外して3本の木ねじを外すと、ドライバを後ろ側から覗く形になります。配線の上に細長い穴が開いています。f:id:dai_h_73:20210529025917j:plain
    • 一旦この細長い穴を先述のポストイットで完全に塞いでみました。すると、「量感たっぷりの緩い低音」どころか、存在してほしい低音の量感が極端に無くなりました。外れかけのカナルイヤーイヤホンの音と言ったら良いでしょうか。あまりの音質の変わりように(深夜3時に)一人盛り上がってました。(少しワインも飲んでました)f:id:dai_h_73:20210529025439j:plain
    • 低音の量感が減ることが確認できたので、こんどは穴を2/3(正方形になる程度)塞いでみました。すると、MDR-Z900が、「30年の呪縛」から解き放たれてベストバランスになりました。f:id:dai_h_73:20210529032227j:plain
  • チューニング後のMDR-Z900の音はというと、MDR-Z600と同様に全帯域バランス外出良くなり、更にワイドレンジになったと思います。ここからは私の推測ですが、MDR-Z900は、MDR-CD900民生用と同じアモルファスダイヤモンド蒸着振動板のままドライバ口径が40mm→50mmになったので、マーケティングの都合で低音の量感が必要だったのではと思います。これに加えて、MDR-Z600との差別化も必要だったのではと思います。「30年の呪縛」の原因だと思っています。
  • 当時は、ディジタルソースのCDと、アナログソースが混在していて、ヘッドホンという出力デバイスの微妙な差に対しての金銭的な価値が、今ほど見出されていなかったように思います。そんな中で、上位機種と下位機種が僅差となってしまうと、マーケティング上都合が悪かったのではと思います。更には、音楽作成現場では、ディジタルレコーディング技術が浸透してきて、今まで技術上の制約で盛り込むことが出来なかった低域を記録することが出来るようになったことも影響しているのではと思います。(ディジタルレコーディング技術以前はサブソニックフィルタでカットしていたと思います)
  • チューニングに関して興味深いのは、密閉型に限りと思いますが乱暴な話、低域の量感は、ポートチューニング(スピーカでいうところのバスレフポートチューニング)でどうにでもなると思いました。一方で中高域については、ドライバの素性がほぼそのまま特性として現れるので誤魔化しが効かないと思います。当時のSONY製ヘッドホンイヤホンのラインナップでは、最上位機種はアモルファスダイヤモンド蒸着振動板で、それ以外は一般的なPET素材そのままだったと思います。たとえば、MDR-E282(アモルファスダイヤモンド蒸着振動板)とMDR-E242(PET)では、16K以上の高域で明確な差がありました。

(MDR-E282:MDR-E242:丁度良いリンクが無かったので検索してください。)

  • 一旦話題をスピーカに移しますが、最近とても勉強になるサイトを発見しました。
  • 詳細は同サイトを見たほうが有益なので割愛しますが、民生用の市販スピーカは単体でバランスをとるために、振動板を重く(磁気回路を弱く)したり、バスレフ等のポートチューニングに頼ったりするので、音そのもののクオリティが劣化してしまうといった内容となっています。また、バランスを無視して音のクオリティを追求すると、中高域のバランスをコントロールするのが難しいそうです。ここでいう音のクオリティとは、final社が提唱している「トランスペアレントな音」を指していると思います。
  • MDR-Z900HDは、おそらくですが当時の未熟な技術で「トランスペアレントな音」を目指したんだと思います。そのため、中高域の特性バランスが崩れてしまい、2K-4Kに大きな山が出来てしまったんだと思います。業務用音響設備では、ツイーター、ホーンドライバー、スコーカー、サブウーハーで構成した、スピーカをマルチチャンネルデバイダ(アクティブネットワーク)とバイアンプ駆動で大まかなバランスを整えて、グラフィックイコライザで微調整するようです。つまり、周波数特性バランスは、増幅部(アンプ)で積極的に補正していく考え方のようです。こうすることで、周波数帯域バランスを保ちながら、もともとスピーカユニットの能力である良好なインパルス応答が得られ、「トランスペアレントな音」を実現しているのではと思います。
  • 何が言いたいかというと、増幅部(アンプ)で積極的に補正して、周波数特性をフラットにしたうえで、音質の優劣を評価しようということだと思います。そこには、「低域が物足りない」とか「サ行が刺さる」とかの評価は無くなり、本当の意味での「応答性の良い音」が評価軸になるのではと思います。
  • ヘッドホンの話に戻ると、バイアンプ駆動は現実的に難しいと思います。そうすると、グラフィックイコライザ補正という話になると思います。ヘッドホンの機種ごとの普遍的な補正カーブは、個々の外耳の形状、容積が影響するので、画一的に定めるのは難しいと思いますが、おおざっぱに「この機種はこれ」っていうのは出来るような気がします。って私はまだ試していませんが、実は既に一部実現しているようです。
  • ただねぇ~iPhoneで持ち歩けないですよね。カジュアルに利用出来るっていうことも大事だと思うんですよね。昨今のワイヤレスヘッドホンイヤホンには、メーカー製のアプリが付いてくることが多いと思います。これに補正カーブを標準装備してくれると助かりますよね。もっと言うと、ワイヤレスレシーバで受信した後で、DACがD/A変換の過程で補正カーブ加味してくれれば良いんですよね。

(追記)

  • チューニング後のMDR-Z900を10時間位聴いてます。私が感じるだけかも知れませんが物凄い良いです。MDR-Z1000と比較しても良い勝負に感じます。MDR-Z900が1992年発売でMDR-Z1000が2010年発売なので、18年の差があるので、MDR-Z900のドライバの穴を小さくしていたら、歴史的な名器になってたかもと思います。(大袈裟かな?)ハイレゾって意味無しって改めて思いました。

最近これ聴いています。
ADAMat
公式は有料のようで、誰かさんが弾いた素敵な動画を、
https://www.youtube.com/watch?v=qIk75uszZns

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キユーピーのCMを担当しているそうです。そういえばうちの近くの渋谷に立派なキユーピー本社が建っているなぁ~。

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